次期学習指導要領で子どもの学びはどう変わるのか?⑴
- プラザくん
- 9月26日
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文部科学省の次期学習指導要領は,現在「今後の教育課程の基準等の在り方について」という諮問を受けて検討が進められています。
おそらく2026年度中に文部科学大臣への答申が行われる見込みとなっており,答申後,2030年度の小学校での全面実施を皮切りに,中学校は2031年度,高校は2032年度から年次進行で順次実施される見通しとなっています。
そこで,今回から次期学習指導要領の改訂ポイントについて解説していこうと思います。
これまでも約10年おきに改訂されてきた学習指導要領ですから,改訂のペースとしては今まで通り。
ただ,今までと大きく異なるのは,社会情勢の変化やその変化に適応するにはどうしていけばいいかといった,いわば外部要因が改訂の背景にあるということでしょうか。

学習指導要領改訂の背景 : なぜ今、教育改革が必要なのか?
理由①:AI時代に必要な力が変わってきた
これまでのように「知識を覚える」だけでは,AIやテクノロジーに置き換えられてしまう時代になることが盛んに言われています。
生成AI(ChatGPTなど)の登場により,情報の収集・分析・創造の方法が劇的に変化しつつあるのは周知の通りであり,IoTやロボティクスの普及で,生活や仕事の自動化が進み,従来の「知識暗記型教育」では対応できないことがすでに明白な事実となりつつあります。
これからは知識・情報をどのように活用できるかといった「考える力」・「伝える力」・「新しい価値を生み出す力」が求められると予想されています。
《具体的な変化》
○暗記よりも「考える力」・「話し合う力」・「創造する力」を重視!
○プログラミングや情報活用の授業が増え,AIとの共存を前提とした教育に!
理由②:未来の仕事は、今はまだ存在していない
OECDの報告では,今の子どもたちの約65%が「現在は存在しない職業」に就く可能性があると言われています。
つまり,今ある知識だけでは大人になって社会に出た時には対応できないことが懸念されており,「創造性」・「問題解決力」・「協働力」が重視されるようになると予想されています。
よって,従来のような模範解答ありきの教育内容では,予測が難しい環境の変化に対応できなくなる可能性が高く,どんな状況にも適応できる柔軟な力が必要と考えられています。
また,国際紛争,パンデミック,気候変動など,予測困難な事象が頻発していることもあり,こうした状況に対応するには,多様な視点を持ち,柔軟に判断できる力の必要性が高まっています。
その意味でも,これからの教育は「正解を教える」から「問いを立てる力を育てる」方向へ進路を変えていかなければならないとも言えるでしょう。
《具体的な変化》
○「課題解決型学習」や「探究活動」が導入され,未知の課題に向き合う力を育てる!
○自分で問いを立て,調べ,考え,発表する力が重視される!
理由③:一人ひとりに合った学びが求められている
不登校の増加や,発達の特性を持つ子どもたちへの理解が進む中で,「みんな同じ」ではなく「その子らしい学び方」を大切にする教育が求められています。
昨今よく耳にするようになった「ギフテッド」。
数学,音楽,言語など特定分野に突出した才能を持つ「ギフテッド」と呼ばれる子どもへの支援が制度的に未整備であるのは致し方ない面もあるでしょうが,現場ではギフテッドの子どもたちに対して「浮いてしまう」・「伸ばせない」などの課題があり,特別な教育課程の編成が可能になる方向への舵取りが検討されています。
また,2023年度に全国で30万人を突破(過去最多)した小中学生の不登校ももはや目をそらせない現象となりつつあるようです。
不登校増加の背景には,発達特性,家庭環境,学校とのミスマッチなどがあり,画一的な教育では対応が困難になっているため,「学びの多様化学校」や「調整授業時数制度」により,個別最適な学びの保障を目指すようです。
特に最近では,千葉県公立高校入試においても,内申書で欠席日数を記載しなくなるという変化が起きています。
もはや不登校は特別な子に該当するものではなく,どこにでも誰にでも起こりうることとして認識されつつあるのかもしれません。
そして,教育現場の長時間労働が問題となって久しいままなため,教員の負担軽減ということも重要視されるようです。
「探究型学習」や「プロジェクト型学習」の導入が進むのは理念として歓迎しつつも,実際の現場では時間・人材・制度の壁があり,結局現場の先生任せ=負担増とならないかを十分に考慮する必要がありそうです。
次期改訂では,授業時間の短縮と再配分により探究の時間を確保することや学校裁量の拡大・評価方法の多様化により,持続可能な教育体制を目指すということも検討されているようです。
《具体的な変化》
○「個別最適な学び」や「多様な学び方」が導入される!
○オンライン学習や校外学習など,学びの場が広がる!
今回は,次期学習指導要領の改訂の背景や理由について解説してみました。
要約すると,次期改訂のポイントは
①「未来の社会に対応できる力を育てる」
②「多様な子どもたちに応じた学びを保障する」
③「教育現場が疲弊しない仕組みをつくる」
という3つの大きな課題に応えるものと言えるかもしれません。