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執筆者の写真プラザくん

12.指折りたし算・引き算②

前回は「たし算」について触れましたが、今回は「ひき算」がテーマとなります。
おそらく、たし算よりもひき算の方が苦手(嫌い)というお子さんが多いのではないかと思います。
まずは、たし算よりもひき算の方が難しく感じるのはなぜかというところから始めてみましょう。

算数に限らず、横書きの場合は左から右に書いていくことが一般的です。
定規を見ても、左から右に数字が増えているのが普通ですし(左利き用定規は逆目盛りですが)、漢字の書き順も原則は左から右。
と考えてみると、物心ついた時から横に並んでいるものは、左から右に見るものがほとんどであり、無意識のうちに左から右に見る癖がついていても当然のことでしょう。

おそらくたし算が考えやすいのは、左から右に数字が増えていくことにあまり違和感を感じないという点があるように思います。
定規の目盛りも数直線も同じように左から右に数字が大きくなっていくので、たし算はお子さんたちにとって受け入れやすい作りになっていると言えるかもしれません。

逆を言うと、ひき算は左から右に数字が減っていくため、たし算とは全く反対の感覚が必要となってきます。
低学年の算数で、1-□-3-□-5…は問題なくできるけど、20-□-18-□-16…となるとやり辛さを感じるお子さんが少なからずいらっしゃるのも、おそらく「今までとは違う」という何とも言えない違和感が影響しているのではないかと思われます。
大人の感覚からすると、「逆になっているだけでしょ」とか「今までの反対じゃない」というような一言で片付いてしまうことですが、数字の並びや増え方などがしっかりしていないお子さんからすると、いつもと違う順番というだけで、少し混乱してしまうということも十分考えられます。

ちなみに、この「今までと違う」という違和感は、小学校低学年だけに起こる現象ではありません。
中学受験の逆算(□を求める計算)や中学生の平方根(2乗する前の数字)でも同じように混乱するお子さんがいらっしゃいますし、文章題でわざと条件の順序を変えて分かりにくくするというのも同じ要領と言えるでしょう。


小学3年生の授業中に何気なく「ひき算」って何?と聞くと、大方の予想通り「ひくこと」と答えてくれることが多いです。
そこで、わざと意地悪をして、「ひくって線を引くのひく?ピアノを弾くのひく?」とたずねてみます。すると、勘のいい子は「ひき算は答えが小さくなること」というようなことを返してくれたりします。

実はひき算にもいくつか意味があって、
 ①初めからどれだけ減ったか?
 ②複数あるものの違いはいくつか?
というのが代表的なものですが、①はたし算の逆、②は大小比較(差を求める)という点でやや感覚が異なります。
①のどれだけ減ったかを求めるのに使う計算がひき算というのは数直線を反対に進むことというような説明や捉え方ができるかと思いますが、②は減ってないのになぜひくのかというところをしっかり理解していかないと、いずれ文章題でつまずきのもととなる可能性があります

では、「指折りひき算」の是非はどうかというと、「減っていくものを指を折ることで実感している」、「大きなものから小さいものをとって違いを求めるのに指を使っている」という点において「何も問題ない」というのが結論ではないでしょうか。
いずれ、数字の感覚が身についてくれば、毎回指を折らなくてもできるようになってくるでしょうし、ひき算の感覚を身につけるという点では、定規の目盛りを行き来するというのも一手です。


ここまで2回にわたり「指折りたし算・ひき算」についてお伝えしました。
お子さんたちが小学校で学習する内容は、大人の目からするととても簡単なものに映りますが、低学年のお子さんたちに原理や法則をきちんと理解してもらうというのは、実は結構難しいことです。
算数では、当たり前のことを説明するのが実は一番難しいことだったりしますので、まずはお子さんが自信を持って答えにたどり着くことを温かく見守っていくのがベストだと思います。
そのために「指折り計算」をしているのであれば、「答えにたどり着こうとして頑張っているなあ」というぐらいの感じでちょうどいいのではないでしょうか。
しばらくは時間もかかるでしょうが、いずれ数の概念がしっかりしてきたら数字で計算できるようになるでしょうから、それまでは長い目で見てあげるのが大切です。
大人であっても、数えた方が早いと思えば、1つずつ数えることがありますので、お子さんたちが自分の指を折って実体のあるものを数値化していることは、むしろ算数への入り口に立ったというような理解で、お子さんたちの成長をあたたかく見守ってあげましょう
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