不登校という選択①
- プラザくん
- 3 日前
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ひと昔前までは,不登校のことを登校拒否と呼んでいました。
「勉強が嫌だから学校に行きたくない!」
「会いたくない人がいるから行きたくない!」
といった状態はすべて登校拒否と言われ,登校拒否=サボりというレッテルが張られていた時代もたしかにありました。
しかし,徐々に「学校に行きたいのに出かけようとすると体調不良で行けない…」というような症状を訴える事例が増え,どうやら単なるサボりでもないのではという見方をされ始めてから,登校拒否がだんだん不登校という言葉に置き換えられていき,現在では不登校という言葉が一般的に使われるようになっているようです。
メディアでも不登校児童生徒の問題が報道されていましたが,2024年10月31日,文部科学省より公表された「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」をご覧になった方はいらっしゃいますでしょうか。
全41ページからなる調査結果の概要からは,不登校だけでなくいじめや暴力行為なども含めた児童生徒の問題行動に関するさまざまな実情を見て取ることができますが,今回は昨今話題となっている不登校について現状を知ることから始めていきましょう。
【不登校児童生徒の推移】
数字だけを追えば,令和5年度の小・中学校における不登校児童生徒数は346,482人で,前年度の299,048人から47,434人(15.9%)増加,11年連続増加の過去最多とありますから,一気に増加した感が否めません。
また,在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は3.7%(前年度3.2%)らしく,全体に占める割合でいうとまだ少数派と印象を受けますが,3.7%というのは30人学級に1人は不登校児童生徒がいる計算になりますので,どのクラスにも不登校児童生徒がいるのが今では当たり前のことのようです。
実際に私どもに通われている塾生さんからも,「○○さん学校来なくなっちゃった~」と軽い感じで耳にすることがよくありますので,子どもたちは大人の想像よりも柔軟に不登校を受け入れているように感じます。

【不登校児童生徒の学年別内訳】
小中学校においては,学年が上がるにつれて不登校の児童生徒数が右肩上がりとなっていますが,特に注目すべきは中学生の増え方です。
令和5年度においては,中1が小6の1.59倍,中2・3にいたっては小6の2倍以上となっていますから,中学生になった途端に増加する傾向はあまりにも顕著です。
中学生になって不登校が増えるのには分かりやすい外的要因がいくつかあります。
教育プラザでは新中1ガイダンスなどでも皆さんにお伝えしていますが,自分ではどうすることもできないことによって影響を受けることを外的要因と呼んでいます。
例えば,複数の小学校から生徒が集まって中学校生活が始まることが一般的ですが,周囲は知らない人だらけという状況がうれしい人もいれば苦手な人もいます。
また,教科担任制で授業ごとに先生が異なることや,部活動での上下関係など,小学生のころには考えもしなった他人との関わり方を否が応でも何とかしていかなければいけないのも,人によってはかなりのストレスになるかもしれません。
そして,勉強面では定期テストによる順位付けや内申点を意識した提出物・授業態度に気を配らなければいけないという点も小学校生活とは大きく異なる点でしょう。
つまり,小学生から中学生になると,それまで考えもしなかった周囲との関係性や,勉強面での現実に向き合わなければいけない場面が多々あり,知らず知らずのうちにストレスを抱え込んだり,うまく適応できなかったりするというような外的要因が一気に増えると言えるでしょう。
かつてサボり癖として扱われていた登校拒否には,「やりたくない」・「めんどくさい」といった自分自身の内的要因が大きく関与していました。
周囲の大人も気楽に注意できていたのは,あくまで内的要因なら「自分で何とかしろ」と言えたからではないでしょうか。

【不登校の要因】
不登校の児童生徒に,当てはまるものすべてに回答してもらったという調査結果を下表にまとめてみました。
ご存じでしたでしょうか,不登校の要因の圧倒的1位は「学校生活に対してやる気が出ない」つまり「無気力」とのことでした。
いじめが要因の不登校はわずか,いじめ以外の友人関係も小中学校ともに15%未満,学業不振が15%前後に対して無気力が倍以上の32.2%というのは,不登校の児童生徒に対する対応の難しさを物語っているような気がします

最近の不登校で問題視されていることの1つとして,「やらなきゃと思いながらもやる気が出ない」・「学校に行かなくちゃと思いながらも行く気がしない」といった自分の気持ちと行動が一致できなくなり,自分でもどうしていいか分からないという状況から不登校に陥っている児童生徒が少なからずいるということかと思います。
不登校の児童生徒が増加し続けている現状では,治療よりはカウンセリング,サボりではなく無理をしないといった周囲の認識を変えていく必要があるのかもしれません。