高校無償化③
- プラザくん
- 4月28日
- 読了時間: 4分
前回もお伝えしたように,先行事例の大阪・東京では明らかに公立離れ・私立人気の傾向となっています。
高校授業料が無償化されれば,当然のことながら公立離れが加速するのは目に見えているのに,さほど議論もされずにまかり通ってしまったように見えるのは気のせいでしょうか?
ちょうど,そんなことを考えていた折,石破首相が全国の公立高校の単願制見直しに言及したというニュースを目にしました。
あまり勘ぐってはいけませんが,「最初からそのつもりだったのか?」と思いたくなるような絶妙さです。
おそらく高校無償化というのは,単に家計の負担軽減だけで済むはずもなく,少子化による公立高校の統廃合やセーフティネットとしての公立高校の役割の見直しも含め,入試制度も変容していくことが予想されます。
では,私ども千葉県の公立高校がどのように変わろうとしているのか見ていきましょう。
公立高校入試の改善点
令和6年12月18日,千葉県教育委員会より令和8年度以降の千葉県公立高校の入試における改善点(2点)が公表されました。
1.調査書の記載項目の精選
(令和8年度入学者選抜から)
【調査書から削除される項目】
①総合的な学習の時間の記録
②出欠の記録
③行動の記録(第3学年)
④総合所見
2.学力検査「国語」における「放送による聞き取り検査」の見直し
(令和9年度入学者選抜から)
「放送による聞き取り検査」に代わり、話し合いの場面等を設定した文章による出題となる。
上記2点は,中学生からしたら嬉しいことばかりのように思いますが,調査書(内申書)から上記4点が削除されると,9教科の評定しか記載されていなようなものになってしまいます。
中学校が調査書を作成する意義はずいぶん薄れてしまうでしょうし,提出された高校側も選抜資料としてどこまで重きを置くか,判断が難しい選抜資料になるかもしれません。
また,国語の聞き取り検査が文章による出題に代わるのも中学生にとっては喜ばしいことでしょうが,そもそも論として,国語はただでさえ試験時間が足りていませんので,聞き取り検査以上に時間がかかる問題が導入されないことを願うばかりです。
現状では英語だけ60分となっていますが,国語も聞き取り検査見直しと同時に試験時間を延長するようなことがあると,中学生の国語の力をより客観的に測ることができるのではないかと思いますが…
《令和8年度以降の入試改善点》

県立高校の再編計画
令和4年3月に策定された県立高校改革推進プランによると,生徒の多様なニーズへの対応やキャリア教育・職業教育の充実,また人口の減少に対する対策として計画的に県立高校改革を進めようと取り組んでいます。
その中でも,魅力ある県立高校づくりの推進として,従来あるような普通科や専門学科の充実・改善だけでなく,新しい学校づくりにも取り組もうとしています。
意外と知られていませんが,すでに始まっている魅力ある高校づくりをいくつかご紹介します。
【令和5年度~】
福祉コース…船橋豊富
【令和6年度~】
起業家育成コース…千葉商業
教員基礎コース…国府台・成東・大多喜
グローバルスクール…松戸国際
保育基礎コース…鎌ヶ谷西
医療コース…小見川
農業経営者育成コース…茂原樟陽
観光に関するコース…一宮商業
先端ITコース…袖ヶ浦
また,少子化対策として,1校あたりの適正規模を原則1~3学区の都市部で1学年6~8学級,4~9学区の郡部で1学年4~8学級とすることや,10組程度の統合を見込んでいるとのことです。
【令和6年度 都市部(1~3学区)で6学級以下の全日制高校】
○6学級
京葉工業・千葉工業・柏井・犢橋・船橋古和釜・船橋法典・市川工業・松戸・松戸向陽・沼南高柳・流山北・我孫子東
○5学級
八千代西・船橋北・浦安・鎌ヶ谷西・流山
○4学級
泉・船橋豊富・行徳・浦安南・沼南・清水
【令和6年度 郡部(4~9学区)で4学級以下の全日制高校】
○4学級
佐倉西・八街・小見川・銚子・東総工業・大網・茂原・一宮商業・大多喜・大原・長狭・安房拓心・館山総合・木更津東・姉崎
○3学級
下総・多古・旭農業・松尾・東金商業・九十九里・天羽・君津青葉・市原・京葉・市原緑
《県立高校推進プラン》
千葉県で県立高校再編計画が策定された当初(令和4年)は,魅力ある高校づくりや少子化対策を見込んだ政策は十分検討されていたでしょうが,授業料無料化まではさすがに見越せていなかっただろうと思われます。
まさか私立高校まで授業料無償化となってしまうとは予想だにしていなかったでしょうから,県立高校の再編計画の見直しや公立高校の入試制度そのものを改めていく必要性があるように思います。
少なくとも,高校無償化によって公立離れ・私立人気は避けようがない現実となるでしょうから,おそらく私立高校の入試制度にも影響が出てくるはずです。
次回はそのあたりも含めて高校無償化によって高校受験そのものがどのように変化していくのかを考えてみたいと思います。