11/3四谷大塚全国統一小学生テスト保護者会から,今回は中学入試理科の出題傾向について解説していきます。
首都圏の入試情報は四谷大塚からの情報をもとに,教育プラザなりの見解も交えてお伝えしていきます。
全体的な傾向
2024年度の入試問題は,概ね小学校や塾で学習する内容について出題されていた。
どの学校の入試問題においても,単純に知識を確認する問題だけではなく,分野によって多少違うが,あるテーマについて,表やグラフ,図や文章などを用いて様々な形で条件を提示し,その条件を利用して解答を導き出す問題が多く見受けられた。
⇒理科的な分析力や思考力を問う出題が多い!
2024年度の問題の特徴
①大設問1題は同じ分野の問題で構成されることが多いが,その分野の中でも多岐にわたる領域から出題する学校が増えている。
⇒受験生が幅広く学習を行い,知識や考え方を身につけているかどうかの確認!
②感染症や環境問題,自然災害や天文現象など,さまざまな話題があったことから時事的内容が出題され,その事柄自体を問うだけではなく,その事柄と関連のある,受験生が今まで学習してきた内容を問う出題が目立っていた。
⇒受験生がどれだけ社会に目を向けているのかを確かめるため!
分野別の出題傾向
(1)生物分野:「植物」,「動物」,「ヒト」
例年と比べた出題率を見ると,「動物」・「ヒト」領域が高かった。
「動物」領域
動物や昆虫のからだのつくりと分類などに関する基本的な出題だけではなく,動物の生態や特定外来生物についての出題もあった。
「ヒト」領域
心臓を中心とした血液循環の問題が多く出題され,知識だけではなく,グラフなどのデータ活用が求められた。ウイルス関連の問題も散見されたが以前と比べると減少している。
「植物」領域
花のつくりや分類,発芽や光合成,蒸散の実験など基本的な出題が多く見られた。「動物」・「植物」領域に関わるが,食物連鎖についての出題も減ってはいない。また,顕微鏡の使い方についての出題が目立っていた。
⇒生物についての基礎知識を確実に定着させること!
⇒身の回りの生物を観察する力をつけること!
⇒SDGsや温暖化に関連することなど身の回りで起こる事象に関心を持つこと!
⇒与えられたデータを分析する力を身につけておくこと!
(2)地学分野:「地球・太陽・月」,「恒星・惑星」,「地層・火山・地震」,「気象」
領域ごとの出題率では,「地球・太陽・月」・「地層・火山・地震」領域が例年より高い。
「地球・太陽・月」領域
太陽の動きと日影曲線や日時計の問題,基本的な月の満ち欠けの出題が多く見られた。金環皆既日食という珍しい現象があった年だが,日食についての出題は多くなかった。
「地層・火山・地震」領域
関東大震災から100年ということもあり,地震に関する出題が多く,基本的な計算だけではなく,地震波がどのように伝わるかという本質的な内容を問う出題も見られた。また,緊急地震速報についての出題も毎年見られる題材になっている。火山についての出題も多く,火成岩との関わりを問う出題が多かった。
「恒星・惑星」領域
金星・火星を中心とした基本的な惑星の問題,星座早見を使った問題が出題されていた。星座早見については実際に使い,使い方をマスターしておきたい。
「気象」領域
天気図や前線に関する出題はもちろんのこと,台風通過時の気圧・風向の変化をデータから考える出題が見られた。
「地層・火山・地震」・「気象」の領域
自然災害に対する関心を持っているかどうかを問われている。ハザードマップについてはきちんとチェックしておきたい。
⇒身のまわりで起きている現象にどれだけ興味を持っているかを確認するため,時事的要素を含んだ問題が多く出題されている!
⇒時事的な内容で確実に得点するためには,日頃から新聞やテレビなどの報道に気をつけておかなければならない!
(3)物理分野:「電気・磁石」,「光・音」,「運動・てこ」,「滑車・ばね・浮力」
今年度の出題率は,「運動・てこ」・「光・音」領域が例年と比べて高くなっている。
「光・音」領域
音に関する出題の中で,モノコードや水量を変えた試験管を使った問題が増加しただけでなく,音速の計算とドップラー効果の出題が増えた。
「運動・てこ」領域
昨年減少したてこの出題が増え,曲がった棒やいろいろな形の板を使い,物の重心を考えさせる出題が増えていた。
「電気・磁石」領域
いろいろな回路図で,電流の大きさや豆電球の明るさを考える,基本的な問題が多く出題された。
「滑車・ばね・浮力」領域
基本的なばねと浮力を組み合わせた出題や密度を使った出題が多く見られたが,中には斜面上に置いたおもりをばねで支え,ばねののびを考える問題なども出題されていた。
「てこ」・「ばね」については今まで見たこともない問題にあたり,とまどった受験生もいたと考えられる。
⇒以前は男子校や共学校では複雑な問題が多く出題され,女子校は比較的基本的な出題が多かったが,ここ数年の傾向として,その難易度の差は小さくなっている!
⇒物理分野で確実に得点する力をつけるためには,各領域の基本事項や考え方をしっかりと身につける学習をしておくことはもちろんのこと,演習量を増やし,計算を素早く正確にこなす力や思考の過程を丁寧に追う力をつける必要がある!
(4)化学分野:「水溶液」,「燃焼・熱」,「気体・金属」
この分野では例年と比べ,「気体・金属」領域の出題率が高くなり,「水溶液」領域は若干下がってはいるものの高い出題率を保っている。
「気体・金属」領域
性質と分類発生量の計算などの問題が多い。中でも温室効果ガスでもある二酸化炭素については,出題割合は高い。
「水溶液」領域
基本的な性質や中和について問うだけではなく,複雑な溶解度の問題も見られた。
「燃焼・熱」領域
基本的な熱の伝わり方や状態変化の問題は少なく,気体や金属の燃焼で,計算力が必要な問題が多く出題されていた。また,「実験器具」については,ガスバーナーやメスシリンダー,濾過装置について出題されていた。これらの器具の特徴や操作手順などは確実に身につけておかなければならない。この領域の問題は,グラフや表を使って解く計算問題が多く,思考力と計算力を確かめることができるため,次年度以降も出題は多いと考えられる。一部の学校では原子・分子モデル,pH(ピーエイチ),水の電気分解など,小学校では扱わない内容も含まれていたが,与えられた条件を整理し,解き進めることで,知識がなくても正答を導き出せる構成になっていた。
⇒男子校や共学校では深い理解と確かな計算力を身につける必要がある!
⇒女子校では基本的な知識や考え方,グラフの読み取り方などを確実に身につけておきたい!
今後の対策
近年の入試傾向では,多くの知識を身につけていれば得点できるような出題は少なく,与えらえた条件の中から本質を見抜き,身につけた知識・考え方を使いこなす力が必要とされている。未知の現象に関する問題であっても,その本質は今まで学習してきた知識・概念で解決できるものが多い。
⇒基礎知識の習得と基礎概念を本質的に理解すること!
⇒未知の現象から本質を見抜く力,身につけた知識・考え方を使いこなす力が必要!
⇒社会で起きていることに積極的に目を向け,いろいろな情報を得ること!
⇒基礎知識・基礎概念を習得した後,問題演習を多くこなすこと!
今回は,中学入試問題理科についてお伝えしました。
次回は社会について解説していく予定です。