2024年5月、毎年のごとく千葉県より令和6年度千葉県公立高校入試結果が公表されました。
教育プラザでは、それらの情報と進学研究会独自に入手した情報も織り交ぜて、塾生保護者様を対象とした高校入試説明会を実施しておりますが、今回から数回に分けて主だった話題をいくつか取り上げていこうと思います。
まず第1弾は「公立高校離れ」
千葉県は昔から公立王国と言われるほど公立高校が強い地域ですが、ここ数年その情勢が変化してきているのをご存じでしょうか?
端的に申し上げると、初めから公立高校を志願する生徒が減少しているだけでなく、最近では私立高校受験後に公立高校進学をやめて私立高校進学を決める生徒が増加しているという構図になっています。
特に、私立高校単願(専願)と呼ばれる入試制度で、早くから進路を私立高校に絞り込む生徒が増加しているのは特徴的です。
千葉県公立高校入試が一本化されて以降、公立高校の第一志望者は約70%で推移しており、一本化前に比べると明らかにその割合が減少しているのが分かります。
もう少し遡れば、公立高校の第一志望者割合は80%近くあった時代もあった訳ですから、その減少ぶりは特にここ数年で顕著になってきていると言えます。
ただし、ここで留意しなければいけないのは、千葉県の公立高校全体の志望者が減少している訳ではなく、人気校とそうでない高校との二極化が進んでいるということです。
※表中の基準偏差値による高校の分類は進学研究会調べによって作成
ご覧の通りですが、千葉県の公立高校では、「上位校志向」・「普通科志向」の2つの傾向があり、受験生が集中する高校とそうでない高校との二極化が激しくなってきているといえます。
ですから、「公立高校離れ」というのも、集まるところに集中し、離れるところは極端に減っているというのが正確な表現かもしれません。
上表は、公立高校入試一本化以降のデータとなりますが、不合格者数と定員割れ校の数に思わず目を疑ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
公立一般入試が不合格となった受験生のほとんどはそのまま私立高校へと進学先を決めているものとみて間違いありませんので、「どうしても公立高校」とか「まずは公立」とお考えのご家庭が減少していることが予想されます。
つまり、「公立高校を受験するのであればそれなりに納得のところ、そうでなければ私立高校」というのがここ数年の傾向と言えるかもしれません。
では、この状況が続くとどうなるのかというと、当然のことながら千葉県も将来を見据えた取り組みを計画・実行しています。
令和4年10月発表の「県立高校改革推進プラン 第1次実施プログラム」によると、令和5年度以降、県立高校に福祉・保育基礎・医療などの専門的なコースや、教員基礎・起業家育成・観光・農業など卒業後の将来に通じるコースを新設することで、新たな魅力と特色ある県立高校の姿を模索していることがうかがえます。
そうは言っても、「上位校志向」・「普通科志向」という最近の傾向からすると、認知・浸透には時間がかかるかもしれませんので、募集定員の減少や地域によっては統廃合ということもいずれ検討されていくものと思われます。
少し皮肉な現実となりますが、千葉県の「県立高校改革推進プラン」の根底には、
①生徒の多様なニーズへの対応
②キャリア教育・職業教育の充実
③人口の減少
の3点があるようですが、現状の「上位校志向」・「普通科志向」の背景には、高校入学時に将来を見据えることがまだできていないため、卒業後の大学進学が望める高校をまずは選択するという考えが大きく影響しているので、①生徒の多様なニーズへの対応、②キャリア教育・職業教育の充実というのが本当に必要とされるにはしばらく時間を要するのではないかと思います。
今回は千葉県高校入試の情報から「公立高校離れ」についてお伝えしました。
次回は「公立から私立への志望移動」について触れていこうと思います。