前回に引き続き,11/3四谷大塚全国統一小学生テスト保護者会から,中学入試算数の出題傾向について解説していきます。
首都圏の入試情報は四谷大塚からの情報をもとに,算数の指導方法については教育プラザ独自の考えを織り交ぜてお伝えしていきます。
全体的な傾向
(1)一般的な算数の入試問題形式
試験時間…45分~50分
問題構成…計算,小問(一行問題),大問の順に設問総数16~20問
⇒この出題形式の学校では,小問で基礎力を確認し,大問でやや難しい典型題への習熟度や初見の問題に対応する力や思考力を確認することが多い。
(2)大問中心の出題形式の学校
開成,筑波大附属駒場,麻布,栄光学園,渋谷教育学園幕張など
⇒大問1から初見の問題に対応する力や思考力を確認する問題が出題され,難易度順に問題が並んでいないことも多い。
(3)出題レベル
極端な難問はごく一部に限られるが,各学校が工夫を凝らし,いわゆる典型題そのままの出題ではなく,見た目や設定を絶妙にアレンジすることで問題レベルを上げる意欲作が目立つ。
また,試験中の作業や思考を重視する問題など,単に解き方を覚えているだけでは対応できない,本質をきちんと理解できているかを問う出題が増えている。
典型題といわれる問題は毎年増え続け,例えば10年前は難関校でしか出題されず一部の受験生のみが学習すればよかった問題が,今ではあらゆるレベルの学校で出題される典型題になっているものも多い。超難問がどれだけ解けるかを試す学校はほとんどないという意味では基礎力重視といえるが,一方で解き方の暗記や知識だけで対応できる問題は減少し,ある意味では数年前と比べて難化しているともいえる。
⇒知識を持っていることを大前提として,その知識をどのような場面でどのように利用するかを適切に判別できる力を問われる入試へと変貌を遂げているといえる。
出題領域別に見た傾向
(1)文章題の領域…割合と比,和と差,速さなど
文章題の中では割合と比の比率が最も高く,その中でも仕事算,比,食塩水がベスト3,速さでは,旅人算,グラフ,速さの3公式がベスト3である。
和と差では平均,差集め算,つるかめ算の出題が多いが,答えを出すまでの途中過程でつるかめ算や差集め算の考え方を用いるといった出題割合には現れない部分で利用することも多い。
割合と比や和と差の問題は,古典的な〇〇算と呼ばれる問題など,出題されるテーマは多岐にわたる。
速さは,正比例,反比例の関係を使って比を使いこなせるかが最大のポイントになる。
⇒多くが予習シリーズなどの教材に出てくるような典型題であるが,一工夫が必要な問題も見られる。
(2)数と規則に関する領域…数の性質・規則性・場合の数など
この領域では,約数と倍数を利用する問題,場合の数,数列が多いが,単純に知識や公式を確認する問題だけでなく,知識や公式を利用し,条件を整理したり,規則性を発見したりして,丁寧に調べていく作業を伴う問題が多い。どこに注目して過不足なく調べていけるかという制限時間内での緻密さが試されていると考えられる。
条件を整理したりその場で作業をしたりしながら,類推や思考をくり返すタイプの問題は,近年増加傾向かつ難化傾向にある。
問題文が長文になることも多く,時間をかけてしっかりと取り組みたい領域である。
⇒試験現場での作業を問われる問題は,試行錯誤したり,論理的に思考するなど今後勉強以外の場面でも必要とされる能力であり,試行錯誤や思考を厭わない生徒がほしいという中学校のメッセージ。
(3)図形の領域……平面図形・立体図形など
平面図形では,相似,面積と辺の比,図形の移動,角度や求積などの出題が多く,その中でも,近年は円の中心と結ぶ平行線を引くなど,自分で適切な補助線を引きながら解き進める問題や図形の移動の問題が目立つ。
立体図形は,出題数こそ平面図形よりも少ないが,ここ数年各学校が趣向を凝らした本格的な問題が多い。
立体の切断を中心とした求積問題が最大のポイントである。
ここ数年,立体の内部にある点に注目し,断面図をかいて考える問題やくり抜いた立体の切断, 2つの立体の共通部分など様々な工夫を凝らした問題が多く見られ,定番化したといえる。
また,水量とグラフの問題も数多く出題されている。
⇒その場で自分で作業をする力を把握する問題が増加傾向。原理原則をしっかりと理解していることを前提として,出来不出来の差が現れる絶妙な設定やレベルの問題が多い印象。
教育プラザの算数指導で心がけていること
(1)テクニックはシンプルに
中学受験算数特有の様々な解法を,有機的に結びつけるように学んでいくことで解法の引き出しを増やし,入試問題への応用力も高める。
(2)授業プリントは真っ白で
入試本番で初見の問題に自分の考えを書き出していけるように,あえて罫線も方眼もない紙の上に途中式を書き,図形・表もフリーハンドで書く。
(3)プロセスを丁寧に
文章題を図式化することで数量関係を見つけ出したり,変化する形や数量を表やグラフにまとめることで規則性を見つけたりする力を身につける。
(4)直してこそ伸びる
間違えた問題が次に自分で再現できるかどうかで点数は変わってくるので,間違い直しをするのが当たり前という接し方をする。
今回は,中学入試問題算数についてお伝えしました。
次回は国語について解説していく予定です。