保護者のみなさんにお聞きしてもあまり知られていないようですが、実は小学校の教科書は令和6年度(2024年4月~)に改訂され、デジタル教科書が本格導入されて早1年が経過しようとしております(中学校は令和7年度から)。
そこで、今回はすでに始まっているデジタル教科書について掘り下げることで、デジタル教科書の未来について考えてみたいと思います。

そもそもデジタル教科書とは?
①紙の教科書の内容を基本としたシンプルで軽いもの
②多様なデジタルリソースと円滑につながるアクセス機能,学習支援ツールとの連携,ルビや拡大等のアクセシビリティー機能等を備える
といった点が従来の教科書との違いのようです。
単純に、教科書が軽くなるならありがたいですし、GIGAタブレットを有効活用できるのも利点ですよね。
紙とデジタルの融合
文科省は「リスニングやスピーキングへの効果が期待できる」として、令和6年度から小学5年~中学3年の「英語」にデジタル教科書を導入することとなりました。
令和6年度から小学5・6年の英語は、端末を用いたデジタル教科書としても使えるようになっています。
デジタル教科書について、令和6年度に「英語」で先行導入され、その後、英語に次いで現場ニーズの高い「算数・数学」の導入を検討することとなっていますが、当面の間はデジタルと紙の教科書を併用することになっています。

2024年から導入されたデジタル教科書の最大の特徴は、QRコードを利用したデジタルコンテンツが大幅に増加した点だと思います。
紙の教科書にQRコードを大幅に取り入れることで、アナログの教科書からデジタルの世界へとつながり、様々な教材やソフトウェアと効果的に組み合わせることで、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実も目指しているとのこと。
実際の効果は今後検証していくこととなるのでしょうが、紙の教科書の内容がデジタルの映像として視聴できることで、視覚的に大きなインパクトを与えるものになり、想像するよりも実物を見ることでよりリアルな体験につながっているのは事実のようです。

ここまでの内容であれば、文部科学省主導で推進するデジタル教科書は、これからの時代に適したとても素晴らしいツールとしての期待感だけのように感じます。
しかし、2024年10月にメディアで報道された、「デジタル教科書先進国のスウェーデンが脱デジタル化に大きく舵を切り、紙の教科書に回帰する」というニュースをご存じでしょうか?
概要としては、IT先進国のスウェーデンでは2006年に学習用端末の「一人一台」配備が始まり、教科書を含めたデジタル化が進んだが、子どもたちの集中力が続かない、考えが深まらない、長文の読み書きができないなどの弊害が出ており、実際の学力調査においてもデジタル教科書の使用で学力が低下したとのこと。
デジタル教科書への懸念
これまで小中学生の学習指導に長年携わってきた者として、スウェーデンのニュースを見たときの正直な感想としては、「やっぱりな」というものでした。
日本では学校教育法を改正して2019年からデジタル教科書の使用を可能とし、紙の教科書との併用を進めながらも2024年からデジタル教科書が本格導入されました。
スウェーデンが15年以上取り組んだ結果として方針転換することを、逆に本格的に始めようとすることに不安を覚えないと言ったらウソになるような気がします。
社会の変化に対応した教育現場のデジタル化は必要だとは思いますが、
例えば、
インフラや指導体制も含めたデジタル化への環境整備は間に合っているのか?
デジタル教科書導入後の効果や影響はどのように見定めていくのか?
など、懸念材料を挙げればいくつも浮かんできてしまう状況に、やはり不安を覚えずにはいられないというのが本音のところです。
当然のことながら、今までなかったことを始めるうえでは、やってみなければ分からないという要素はあるかと思いますが、「これからはデジタルだろ」というような時代の風潮を反映した安易な考えや、欧米の後追い政策としてのデジタル教科書でないことを願うよりほかありません。
今回はデジタル教科書の紹介といった観点で記しましたが、次回はいくつかのアンケート調査結果から、GIGAスクール構想におけるタブレットの活用やデジタル教科書の是非について詳しく見ていきたいと思います。