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31.「怒る」と「叱る」②

前回は「怒る」と「叱る」の違いについて述べましたので、今回は、どうして何度注意しても同じことを繰り返すのかといったことについて考えてみようと思います。

できれば同じことは何度も言いたくないし、言われたくもないというのは、大人でも子どもでも同じだと思います。

でも、何度言われても同じことをして注意されるお子さんっていらっしゃいますよね?

大人からすれば、少し考えて行動すればいいのに… と思ったりしますが、当のお子さんたちはそんな大人の視線も何のそのという子が珍しくありません。

では、なぜ同じことを繰り返して、同じことで何度も怒られるのか?

この点については、いくつか説があるようです。

①子どもは自己制御が未熟なため、同じ過ちを繰り返してしまう。
②子どもは規則や親の期待を理解し、守ることに時間がかかることがある。
③子どもは環境や感情の影響を受けやすく、状況が変わると同じ過ちを繰り返すことがある。
 特に、親に怒られることを恐れて緊張するとかえって自己制御が難しくなる場合がある。

また、心理学的には、

④自分に何かしらのメリットがあるから同じことを繰り返す。

という見方もあるようです。

①と②については、お子さんの成長とともに改善されていく部分が多いようですから、少し気長に相手をしていくしかありませんが、③と④については少し厄介ですね…

③については、怒られることが分かってるのならやめればいいのに…と思いますが、そうは言っても目の前の誘惑に勝てないのがお子さんです。

「分かっちゃいるけどやめられない」みたいな状態がお子さんなりにあるということですね。

ただ、「分かっちゃいたけど怒られたらどうしよう」という焦りや恐怖心から余計に下手を打つという姿も何となく想像できます。

「だったら初めからやらなければいいのに!」

とついつい怒りたくもなりますが、そこはグッとこらえていただいて、そのうち何とかなるかとやり過ごさなければいけないこともあるかもしれません。

③に関しても①・②と同様、何度か同じ過ちを繰り返しながら、成長していくのかもしれません。


問題は④の確信犯的な理由です。

これは、大人であれば自覚のある確信犯ということになるでしょうが、子どもはまだ無意識の確信犯とでも言いましょうか、本人に自覚がないのが問題です。

しかも、意図せず本能的にやっている部分と、うすうす感づいているのに見て見ぬふりをしている部分の両方があり、本人もはっきり自覚している訳ではないのが面倒なところ


ただ、④についても考えられる理由が2点ほどあるようです。

理由A 怒られている時間がかえって時間稼ぎになって得をする場合
理由B 怒らせてでも自分に注意を向かせたい場合

例えば、何度注意してもゲームをやめないとか、何度言っても片づけや宿題を始めないというのは、理由Aがあてはまるかもしれません。

怒られている間は、生返事をしてゲームを続けられますし、片付けや宿題はあれこれ言い訳をして現実逃避することもできます。


では、理由Bはどんなときかというと、親の愛情を独り占めしたいときというのがあてはまるのではないでしょうか。

赤ん坊がすべての意思表示を泣いて表現するように、怒られる時は親の視線や注意をすべて自分に向けさせることができます

子どもは、親の目線の在り方で愛情を確かめることがあるらしく、自分の力で親を振り向かせるために、わざと怒らせたり困らせたりすることがあるようです。

例えば、振り向いてほしいときにわざと強くたたいてきたり、弟や妹ができると急に赤ちゃん返りを始めたりするのも同じような心理状態だと言えます。


理由Aの対処法

怒ることが時間稼ぎになってしまっているのであれば、予め本人と約束した時間でお子さんの行動を区切るしかないかもしれません。

例えば、ゲームは7時までとか、夕食前に宿題を終わらせるなど、本人と話して決めた約束を実行し続けていくと、だんだんお子さんも約束=守らなければならないルールという認識になってくるのではないでしょうか。

ここで大切なのは、感情的にならずに、淡々と約束を実行することです。

7時になったらゲームのスイッチをOFFにする、宿題が終わってなければ晩御飯は後回しなど、予め約束したことを本気で実行するという意思をお子さんに理解してもらうことが大切です。

かと言って、最初約束してなかった別のペナルティを与えたり、以前の問題をぶり返したりするのはご法度です。

あくまで、その時の約束を実行することが大切です。


理由Bの対処法

たくさん愛情を注いできたつもりなのに、まだ親の愛情を独占したいというのはぜいたくな気もしますが、こちらの愛情確認は、保護者の方に時間的な余裕がない時に限って発生しやすいもののようです。

親)時間的に余裕がなくかまってあげられない 
⇒ 子)親に振り向いてほしい 
⇒ 子)怒られてでも注意を向かせたい 
⇒ 親)余計に手間がかかって、より時間がなくなる…

といった具合に、保護者の方からすると迷惑極まりないループですが、それでもお子さん本人は怒られることで親御さんの視線を独り占めするという目的は達成されることになるようです。

では、どうすればいいかというと、少しだけでもいいので、目線を向けてあげる時間を意図的に作るとか、名前を読んで何でもない会話を交わすなど、「ちゃんと見てるから大丈夫だよ」と安心してもらうより他仕方がないかもしれません。

そうは言っても、うまくできたりできなかったりするでしょうが、もし同じことを繰り返されることでお困りの場合には、試してみてはいかがでしょうか。


今回は、何度注意しても同じことをするお子さんについて触れました。
次回は、「怒り方」・「叱り方」について取り上げる予定です。
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