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中学入試社会の出題傾向

執筆者の写真: プラザくんプラザくん

11/3四谷大塚全国統一小学生テスト保護者会から,今回は中学入試社会の出題傾向について解説していきます。

首都圏の入試情報は四谷大塚からの情報をもとに,教育プラザなりの見解も交えてお伝えしていきます。


全体的な傾向


地球儀

(1)出題分野

今年の入試問題の最大の特色として, AIに関する出題が劇的に増えたことが挙げられる。

昨年までは人工知能の略称としてアルファベットが問われる程度であったが,今年は,生成AIでつくられた文章の正誤を問うたり, AI利用の利点・問題点を考えさせたりするものが多くの学校で出題された。

この傾向は今後も続くと考えられる。

ジェンダーギャップやアイヌに関する出題も目立った。

背景には合計特殊出生率が過去最低に並んだことや,議員数に占める女性の割合などが世界でも下位に位置していることが挙げられる。

また,多様性の面からも性差や民族の問題は,受験生が今後成長していく現代社会をとらえる上で欠かせない視点である。

2023年のできごとからは,やはりG7広島サミットに関する出題が多かった。

核兵器に関わる条約や,グローバルサウスとよばれる発展途上国や新興国との関係に展開した学校もある。

特に人口が世界ーとなったインドについての出題が多く見られた。


(2)出題形式

ここ数年来の傾向である「各選択肢の正誤をすべて正確に判断させる」問題が増えている。

単なる当て推量で選ぶのではなく,選択肢を精読して分析する力や資料に示されたデータを読み取る力が求められて

いる。

また,「知識」としてとらえていた内容を,各種資料を用いて,実証的に理解させる出題も,地理・歴史・政治国際の各分野で見られた。

例えば,茨城県で行われる近郊農業の利点を,運送にかかるコストのデータをもとに判断させる問いである。


歴史では,「大名の経済力をうばうために参勤交代を行った」「遣唐使の廃止によって国風文化が生まれた」など誤解されて広く伝わっている知識に関して,資料を用いて正しい理解につなげる出題があった。

これらは,選抜のための入試問題にとどまらず,今後の人材を育てる各学校の教育観を示す姿勢の現れともいえる。


中学入試社会【出題分野・形式】

分野別の出題傾向


(1)地理分野


①都道府県・地方別

産業や気温・降水量,森林率など自然に関する統計を示し,都道府県を特定する出題はここ数年,定番となっている。

プロ野球やJリーグのチームを切り口とする出題も例年より多かった。

また,川・平野・火山・湖などの地形や世界遺産・政令指定都市の知識も問題を解くポイントとなった。

上水・下水をふくむ水関連の出題も目立った。

②災害

自然災害にまつわる関連事項が出題された。

広島県の砂防ダムの効果のように防災・減災の実例に関する出題も目立った。

単に暗記するだけでなく,読み解く作業が求められている。

プレート,南海トラフ,ハザードマップなどの用語はすでに必須の知識となっている。

③地形図

地図記号,実際の距離や面積の計算,読図などの定番の出題に加え,②の視点もふまえ,災害による被害を受けやすい地域を選択させる出題も見られた。

④農業・水産業・工業

特色ある地域について,資料をもとになぜそのような産業の特色があるのかを考察させる問題が多かった。

この分野でも,資料を分析する訓練が不可欠である。

⑤貿易

イギリスの加盟決定を受けて,今年はTPPに関する出題が復活した感がある。

原油価格の高騰,記録的な円安を背景に貿易相手先や貿易に関する正誤を問う問題も多かった。

中学入試社会【地理】

(2)歴史分野


①人物

人物と業績を理解しているかを確かめる問題が中心である。

2024年に新紙幣に用いられる人物のうち,北里柴三郎,渋沢栄ーはすでに多くの学校で出題されている。

江戸時代の将軍の名を書かせる学校も例年より多く見られた。

②貨幣,税の歴史

新紙幣への移行をにらんで貨幣や税の歴史を問う学校が目立った。

来年も注意したいテーマである。

③正誤判断

そのできごとの因果関係,たずさわった人物,できごとの年代などの正誤の判断を求める出題が多かった。

できごとを関連づけて理解する姿勢が求められている。

中学入試社会【歴史】

(3)政治・国際分野


①日本国憲法

憲法の条文にあてはまる語句を答えさせる問題で,第9条などの定番の問いに加えて,例年より「不断の努力」を書かせる学校が多かった

基本的人権の内容,国会・内閣・裁判所のはたらき,選挙制度,地方自治などは毎年出題されている。

②税と財政

消費税についての出題は昨年に続いて多かった。

例を示し,実際の税額を計算させる学校もあり,ふるさと納税の功罪については,記述させる学校もあった。

③国運・国際関係

グテーレス事務総長の「地球沸騰」は,多くの学校で,地球環境問題への切りロなどとして出題された。

ロシアとウクライナの紛争は,引き続き出題されている。

SDGsは単なる用語を問う問題から,実践例を考察させる問題にシフトチェンジしている。

④現代社会

多様性を求める観点, SNSの功罪,労働環境などに関わる出題が多かった。

⑤時事問題

G7広島サミット,貿易をはじめ発展途上国・新興国との関わり(特にインド),新紙幣,ロシアのウクライナ侵攻, 2024年問題など。

中学入試社会【政治・国際】

今後の対策


社会は単なる暗記科目から,資料・統計を分析・判断するし,世の中の動きをとらえる教科へと変化しつつある。

基本となる知識事項も単なる用語暗記だけでなく,背景知識との関連や世の中との関わりを押さえつつ覚えていく必要がある。


⇒基礎知識の確立…基本となる用語・知識の理解と定着

⇒分析力…表やグラフなどの資料・統計を見て特色を分析する力,数字の変化を理解するカ

⇒読み取る力…文章や設問文,選択肢を正確に読み取り,何が問われているかを理解するカ

⇒表現力…問われたことがらを簡潔に説明し,さらに,自分の考えを表現できるカ

⇒社会への関心…世の中のできごとや情報にアンテナを伸ばし,本質を理解するカ



ここまで,中学入試問題について解説してきました。

今年の中学入試に少しでもお役立ていただけたら幸いです。

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