不登校という選択②
- プラザくん
- 5月15日
- 読了時間: 5分
不登校の要因として圧倒的に多いのが,やる気が出ない(無気力)ということを 前回 説明しましたが,皆さんはどのような感想をお持ちになるでしょうか。
不登校の要因で,「やる気が出ない」と回答した児童生徒は,「いじめや友人関係の問題」・「学業不振や学習面での課題」の2倍以上という現状を意外に思われたかもしれません。
その昔,不登校がまだ登校拒否と言われていたころは,どちらかと言うといじめや友人関係のトラブルにフォーカスされていた感がありました。
しかし,今は他者との関係という相対的な問題よりも自分自身の絶対的な問題によって,不登校に陥っている児童生徒が増加の一途をたどっているというのが実情のようです。
では,千葉県ではどのような状況になっているのかご存じでしょうか。
千葉県が令和5年12月13日から令和6年1月22日にかけて,県内小中学校で1年間に30日以上学校を欠席した不登校児童生徒及びその保護者,県内フリースクール等を対象に行った「不登校児童生徒等実態調査の結果について」から不登校児童生徒の様子を見てみることにしましょう。
【不登校児童生徒を対象とした調査】
児童生徒の回答者…小学生が41.5%・中学生が57.0%
①欠席日数

「180日より多い」が最も多く35.7%,次いで「わからない」が20.0%,「90~180日くらい」が17.4%の順となっています。
ちなみに,欠席日数180日というのは,1年の半分ではありません。
1週間で5日登校が基本ですから 180日÷5日=36週間
1か月が4週間だとすると 36週間÷4週間=9カ月
という計算になります。
つまり,春・夏・冬の長期休業期間を除く1年約10カ月のうち,9カ月以上欠席となりますので,ほとんど登校していないということを意味しています。
②不登校のきっかけ(学校に関すること)
千葉県の調査はあくまで学校に関することということで,やる気が出ないなどの個人的な項目は含まれていなかったので,本音のところが不透明ですが簡単にまとめると以下のようです。
「先生のことで気になることがあった(先生が好きではなかった、怖かった)」が最も多く27.9%
「勉強が分からない、授業についていけなかった」が24.9%
「友達のことで気になることがあった(嫌がらせやいじめがあった)」22.2%
③学校を休んでいるときの気持ち

気持ちの面では「ほっとする」「自由でうれしい」という回答が多い一方で,「勉強や将来が心配,気になる」という回答も同じぐらいありますから,精神的には解放されつつも学校に行かないことの漠然とした不安は感じている状況のようです。
また,「先生や親にどう思われているか」より「学校の友達が自分のことをどう思っているのか気になる」という回答の方が多くなっていることから,気になる視線は大人よりも同級生という傾向にあるのかもしれません。
④どんな場所に行きたいか
どんな場所に行きたいかという質問には,「何時に行ってもいい(遅刻、早退をしてもいい場所)」が最も多く60.6%,次いで「ゆっくり休めるスペース・場所がある」57.4%でした。
いつ行っても良くてゆっくり休めるスペースがある小中学校はなかなか見つからないでしょうから,不登校という選択になっているのかもしれませんね。
千葉県の調査 では,保護者やフリースクールなどの民間施設を対象とした回答もまとまっていますので,ご興味がおありでしたらチェックしてみてください。
【不登校児童生徒の教育機会を確保する条例】
千葉県では,令和5年4月1日に「千葉県不登校児童生徒の教育機会の確保を支援する条例」が施行されています。
ちなみに,条例の基本理念には従来の小中学校では見られなかった柔軟な考え方がうかがえます。
不登校児童生徒の主体性を尊重し,不登校児童生徒が再び登校できるようになることのみを目標とせず,将来の社会的自立を目指す不登校児童生徒一人一人の状況に応じた多様な学習活動を認めて支援する
県,市町村,学校,児童生徒の保護者,フリースクール等その他の関係者が相互に密接に連携する
おそらく不登校の現状を踏まえると,「不登校からの立ち直り=小中学校に通えること」というような杓子定規的なやり方ではどうにもできないという現実が背景にあるのではないかと思われます。
同時に小中学校やご家庭だけで解決に向けた取り組みをするのではなく,フリースクール等の民間施設とも密接に連携するというのは画期的とも言えます。
たしかに「学校に不満や問題がある訳ではない」,「いじめや対人トラブルがある訳でもない」,だけど「なんだかやる気が出ないから休みます」と言われても,学校としては手の打ちようがないですよね。
事例としてはさほど多くはありませんが,私どもに通われている塾生さんたちから聞いた内容では,
「何となく学校に行きたくない」から始まり
「本人の意思を尊重し無理をさせない」ことが欠席となり
「カウンセラーに相談してみましょう」というアドバイスに従ったものの
「様子見をしているうちに遅刻や欠席が増え」
「だんだん不登校状態になっていく…」
というのが不登校への流れのようです。
今話題になることが多い不登校は,いじめなどの問題行動とは異なり,価値観の多様化,コロナ禍で一気に進んだ教育ICT環境の普及など,これまでの公教育のあり方では解決困難な要因が大きく関係しているように思います。
子どもたちの学びをどうやって守っていくか…
そもそもこれから必要とされる学力というのはどのようなものか…
不登校児童生徒が突き付けている現状の課題は,想像以上に根が深い問題のような気がします。